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人生は野菜スープと音楽と

神崎奈津子さんが描く、見事な野菜のドローイング画。これを見ながらぜひ聴いていただきたい音楽を神戸在住の文筆家で、ラジオDJの仕事もされている安田謙一さんに選んでいただきました。いちごに合う1曲はこちら、ブラザーズ・ジョンソンで「ストロベリー・レター23」です。


いちごの歌はそれなりに数が多い。
とっさにあたまに浮かんだのが「ストロベリー・レター23」。
作者はリズム&ブルースのゴッドファーザーの異名を持つジョニー・オーティスの息子、シュギー・オーティス。彼の2枚目のソロ・アルバム『フリーダム・フライト』に収録されている。このアルバムが発売された71年頃、シュギ―の従姉妹とつきあっていたのがギタリストのジョージ・ジョンソン。彼は弟でベーシストのルイスとブラザーズ・ジョンソンを結成。77年に、クインシー・ジョーンズのプロデュースでこの曲をカヴァーし、全米5位の大ヒットとなった。
ブラザーズ・ジョンソン版に入っているキラキラと魅惑的なギター・ソロを弾いているのはリー・リトナー。本家、シュギー・オーティス版ではひとりで多重録音されていて、当然、ここを自分で弾いている。数年前、ジャズ・ベース奏者、チャーリー・ヘイデンの娘、ペトゥラ・ヘイデンもカヴァー。ソロのフレーズを歌で真似ている。おそらく、そこがやりたくて、この曲を取り上げたのでは、と私は睨んでいる。ここまで書いてきた文章に、息子、従姉妹、兄弟、娘が出てきました。混線させちゃって、すみません。
さて、「ストロベリー・レター23」。歌詞はラブレターのやり取りをしている恋人たちの手紙(のひとつ)という形式でこれまでの数を表している。ふたりの共通の符牒。甘~い。
歌われているのは「22通目」に対する返信なので、歌詞には「トゥエンティ・トゥー」だけが登場する。つまり、この歌そのものが「23番目のいちごの手紙」だということ。
すなわち、この「ストロベリー・レター・トウェンティスリー」と発音するだけでも口の中が甘くなりそうな曲の名前を味わえるのは、歌手ではなくて、この曲を紹介するラジオのDJ、という話。それではお聴きください、ブラザーズ・ジョンソンで……。


安田謙一:1962年生まれ。神戸在住。ロック漫筆家。著作に『神戸書いてどうなるのか』(ぴあ)など。ここ数年間に書いたライブ評をまとめた『ライブ漫筆』(誠光社)をコロナ禍に刊行した。

※神戸の野菜図鑑|いちご の記事はこちら