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開放的な料理のために 堀田裕介|料理開拓人

都市と地域、生産者と生活者をつなぐ料理研究家として、イベント「EAT BEAT!」やベーカリーショップ「foodscape!」の展開をはじめ、YouTubeでの発信も試みている堀田裕介さん。コロナ禍以降、積極的に取り入れているという2つの“新・生活様式”について書いていただきました。

 

開放的な料理のために
文・堀田裕介(料理開拓人)

玉造黒門越瓜の重ね焼き
イトヒキアジのムニエル
ニッコウイワナのビリヤニ
スペアリブの鳴門オレンジのマーマレード煮
オジサンのポアレ

一見、聞き慣れない食材を使ったメニューが並んでいますが、最近僕が作った料理です。コロナ禍で生活のリズムがガラッと変わり、料理との向き合い方や使う食材にも変化が生まれたのです。

コロナが流行しはじめた頃は「半年から1年くらいで元の暮らしに戻るだろう」と、高をくくっていたのですが、自分自身の心境の変化も含めて、近頃はどうもそうじゃないぞと感じるようになってきました。余計な外食はどんどん減り、家で食事する機会も増えてきたので、今まで手を出さなかった調理法や、見過ごしてきた食材に興味を持つようになりました。
仕事で作る料理は食材原価や作業効率などに縛られて制限があるのですが、家族や友人のために料理を作るとなると、途端に開放的で幸せな時間へと変わります。

最近、特に気に入って利用しているのが農家さんから旬の野菜が届く「野菜の定期便」です。1か所から届く野菜では物足りなくなってしまい、現在は淡路島と神奈川県の2か所から隔週で自宅に送られてきます。僕が新しい生活様式で取り入れたルーティンの一つです。
スーパーマーケットでは手に入らない新鮮で珍しい在来種の野菜や果物が自宅で食べられるので、もう元の暮らしには戻れないなぁと実感しています。
淡路島から届いた野菜でいえば、紫の水菜、金時草、ローゼルリーフ、翡翠ナス、レッドアマランサス、八丈オクラ、シャドークィーン…などの野菜が印象的でした。冒頭に挙げた「スペアリブの鳴門オレンジのマーマレード煮」の鳴門オレンジも、淡路島でしか栽培されていない在来種だそうです。

そして、もう一つ力を入れているのが「釣り」。これまでも趣味として釣りにはよく出かけていたのですが、必要以上に釣るのではなく、食べれない小さな魚はリリースすることをルールにしています。
大阪湾は季節の変化とともに様々な魚種が漁れる素晴らしい漁場です。幸いにも自宅から明石沖の真鯛やハマチを釣る船上までは1時間もかからずにたどり着けるのです。自分で釣った魚だと、血抜きや神経締めといった処理を丁寧にやれるし、やっぱり鮮度が全然違います。

近年では不漁や異常気象が続いていて、地球の危機は他人事ではないと気付かせてくれました。暮らしの変化によって僕に訪れた小さな波はどんどん大きくなって生きるエネルギーへと変換されます。

さあ、今夜はどんなひと皿を作ろうかな。


堀田裕介|料理開拓人official site:https://food-scape.com/yusukehotta/
instagram:@yusuke_hotta
twitter:@ysksssc
※本文冒頭に記された料理について、YouTubeの番組内でも紹介中

玉造黒門越瓜の重ね焼き:https://youtu.be/lCqX4bYp5tU 
スペアリブの鳴門オレンジのマーマレード煮:https://youtu.be/lU6SvH9VYcs