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心も身体も温まる、農家が営むお風呂屋さん

さ、寒い…。今年もまた冬がやってきた。どうにもこうにも寒さが苦手な私にはつらい季節だ。ああ、今すぐお風呂に行きたい。…人の温もりもほしい。それは別問題。

そんな私のような人間におススメなのが、今回の場所らしい。
やってきたのは、西区伊川谷町。市街地と農村部が入り混じる町だ。

住宅地と近いため、貸農園も大人気。家の周りにすっと通える畑があるのはうらやましい。

そんな伊川谷町の農村の一角に、農家さんが営むお風呂屋さんがあるそうだ。農村の景色を眺めながら到着すると、大きな倉庫のような場所に案内される。

酵素風呂!? サウナ的な何かなのか? 湯気もないぞ?

中に入ると、すっと鼻を抜ける発酵のにおいに、ふとした安心感に包まれる。さらに奥に進むと、倉庫一面に広がる褐色の景色! 風呂であるはずなのに鎮座するトラクター! この見慣れぬ場所は一体…。

「ここは酵素風呂やね。米ぬかを中心に、カニ殻、海藻、微生物を発酵させて60℃くらいになる。僕はもともと花粉症がひどくて、耳鼻科に通っても治らなかったんやけど、酵素風呂に入ったら良くなってね。それがやり始めるきっかけやね」。

時折、大きな声で笑いながら教えてくれるのは、ここ伊川谷町で農業をしながら酵素風呂も営む「森の農園」の森野さん。

森野さんは、農家の息子として育ち、やむを得ない事情で農園を引き継ぐことに。最初の10年は大変だっだそうだが、無農薬栽培に切り替え、こうして酵素風呂を始めるなど、独自にいろんなことを進めている今が面白いという。森野さんは本当に楽しそうに話をしてくれるので、きっとここに通うお客さんもお風呂の効能と森野トーク効能を求めて来ているに違いない。私もふと肩の力が抜ける。

森野さんの畑。酵素風呂で使われた発酵した米ぬかは、畑のぼかし肥料として使われる。

畑には、なんとコーヒー豆がそのまま撒かれている。無駄なものなんてない。

酵素風呂となる、発酵した米ぬかに触れてみる。さらさらの米ぬかの感触がまず圧倒的に気持ちがいい。

「よかったら入ってみたら?」と 森野さんにお声がけいただき、取材チームも足だけ入ってみる。足を入れるだけでも、身体にじんわり温かさが広がり、なんとも気持ちがいい!(2回目)

「人間っていうのは、病院に行って治してもらうんじゃなくて、自分の力で治すのが基本かなと思うのね。現代人は、身体が冷えてるし、運動不足。選んでいる食べ物も…ね。あと僕が思うのは睡眠不足。しっかり寝て、身体を温めてほしいんやね。発酵食品が身体にいいと言われるように、和食を中心にして、酵素風呂に入って身体を整えてもらったらええね」。

酵素風呂は、一般的な風呂やサウナに比べて、身体の芯まで温まることから、好転反応と呼ばれる湿疹が出てくるそう。腸内細菌を活発にして、排泄をよくしていきたいねと森野さん。

人の身体の不思議。なぜ大人になると健康の話ばかりするのかと辟易していた青春時代の若者が、そこから20年歳を取り、会話のメインに据えているのは健康のことばかりだ。酵素風呂に定期的に通ったら、自分の身体がどういう反応をするのかとても気になる。

時間としては、20~30分酵素風呂に入り、着替えなども含めると1時間ほどを予定しておくとよいそう。当日でも空きがあれば入れるが、事前予約がおすすめだ。ぜひ1度、酵素風呂と森野さんの朗らかさに触れてほしい。

 

森の農園 酵素風呂
●神戸市西区伊川谷町前開1346
予約:080-3132-6640または090-3494-5856
※初回1500円(体験料)、2回目以降2200円。
営業時間は14時~17時30分 火・金曜休

 

文:鶴巻耕介

写真:岩本順平