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小麦を育てることからパンづくり。 多様な農に触れたい人へ

町全体が農業地域となっている神出(かんで)町。町内には雌岡山と雄岡山と呼ばれる小高い山があり、漁師たちの港へ戻る目印になっているとか。 そんな神出町には、農業振興を目的とした施設があるとのことで、農に関心のある人には ぜひ一度訪れていただきたい!

まずは兵庫楽農生活センターへ。広々としたロケーションは、まさに農村地域がなせる業。思わず両手を広げて背伸びしたくなるような空間だ。施設内には直売所やレストランがあり、気軽に食を楽しむことができる。

こちらはセンター内にある直売所の「きらめき神出」。え!? 神戸ってこんなに色んな野菜 つくっているの? という出会いが楽しい。

 

ランチタイムを楽しみたい方は、「Five Country Cafe」へ。センター内の畑で生産された野菜や果物をいただける楽農カフェだ。
さらに兵庫楽農生活センターには、「くちーなかんで」と呼ばれる加工施設棟も併設されていて、農や食に関するイベントが毎週行われている。
こちらの加工施設を活用して、小麦の栽培からパンの製造までを行っているのが「パン屋 小麦生活」。今回は、その加古隆一さんにお話を伺った。

小麦を抱える加古さん。なんて熱い眼差しなんだ。

 

「神出で生まれ育ちました。最初はサラリーマンをしていて、20代後半でパン屋になろうと思って製菓学校へ。そうこうしていると、学校で学んでいる最中に、この兵庫楽農生活 センターができるから、ここでパン屋をやらんかと。最後の方は学生しながらここのオー プンも重なったから、めちゃくちゃ大変やったね(笑)」。

そんなご縁でパン屋を地元で始めた加古さん。パンの世界に飛び込むのが少し遅かったという焦りから、加古さんは自分で小麦をつくってパンを焼くという、農村地域の強みを活かした差別化に取り組み始める。

「農業は1年に1回しか試すことができない。ということは30代からだと40回試せるかどう か。本気でやるなら、トライする回数が多い方がええやろと思って、思い立ったらすぐに。自分たちの粉を使って焼くと、他のパンとは違うものができるということもわかりました。差別化しようと思ってやってみたのが目的やったから、やり続ける推進力になって います」。

「小麦生活」のパンは、「きらめき神出」の直売所内で買うことができる。ご自身でつくられた小麦は、全粒粉として使っているため、ハード系のパンと相性がいいそうだ。パンの色味がなんだかやさしくて、自然で、手に取ってみたくなる。ぜひ一度、その違いを楽しんでほしい。

兵庫楽農生活センター内では、食べることや買うことだけに留まらず、パンやピザづくりのイベント、実際に畑で農を体験するような取り組みも積極的に行っているそう。

ピザ窯。採れたて野菜でピザ焼いたら…想像したら猛烈にお腹減ってきた。

広々とした調理室もあり、収穫してから料理するまでの全部が楽しめるようになっている。

「畑のイベントをしていると、子どもたちもそうやけど、親御さんの表情も好きで。今までにない表情をしてるんやろなって。そうやって農や食について一緒に学ぶ瞬間をたくさんつくりたいよね」と加古さん。

種を蒔き、食べるまで……そのプロセスを知ることは、これからの時代に必須かもしれない。新規就農の研修場所にもなっている神戸の農の拠点、天気のいい日にまずはドライブで訪れてみてはいかが。

兵庫楽農生活センター
●西区神出町小束野30-17 ※9:00~17:00、各施設ごとの営業時間はHPを要確認、水曜(水曜日が祝日の場合は翌日)、
年末年始休
※入園無料 https://hyogo-rakunou.com/
パン屋 小麦生活(きらめき神出直売所内)
※9:30~15:30 水曜(水曜日が祝日の場合は翌日)、年末年始休
※きらめき神出以外の取り扱い店舗はHPを要確認
http://kobe-komugi.com/ https://www.instagram.com/komugiseikatu/

 

文:鶴巻耕介

写真:岩本順平