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日差しと草花のあふれる店内で 家族みんなでもいただける会席膳!

県道からほんの少しだけ登った高台に、気持ちのいい風が通り抜ける建物があります。納屋と蔵を改装したカフェのような空間でいて、提供されるのはしっかりとした会席料理。きっとこの心地いいギャップに誰しも驚かされるはず。

三方に窓があってとても開放的。店の中を光と風が通り過ぎていく。

店主ご夫妻の妻のご実家、ユリ農家だった祖父母宅の納屋を店に、蔵を厨房へと改装した。

ほぼ元のままだという建物、この引き戸もガラスを入れ替えただけ。テーブル板も床板を再活用している。

こちらのカウンターはもともと梁の丸太。「あまりお金もかけられなかったので、大工さんに無理言ってお願いしました。床板はヒビが入ってたりもしたから、新しいの買ったほうがいいよって言われながら(笑)」。レジ台には蔵から出てきた長持が使われている。

設計は古民家も多く手がける、北区の村上隆行さん(eu建築設計)。施工を担当したあかい工房とも細かく意見交換しながら進めた結果の、この気持ちいい空間。あえて色ムラを出したしっくい壁もいい具合だ。

看板メニューのキモリ膳2,200円は月替り。先付から、向付、焼き物、煮物、揚物、椀物、デザートまで9品目揃った会席膳。地元の食材も活用されて、取材時の5月は、旬の青のりを使ったしんじょう揚げ、淡路もずくの酢のものなどが目立っていた。

白ごはんには自家製のふりかけまで。「自分がごはんが好きなんで(笑)。ごはんに合うように普通の会席よりは味もちょっと強めにつけてます」とご主人の木全浩治さん。汁物は旬野菜のすり流しで。5月は春キャベツ。

東京の料亭などで20年以上働いてきたが、子どもが小学校に上がるのをきっかけとして神戸市北区へ移住。自身の店を開いた。

「ずっと会席料理をやってきたので、それしかできませんけど、すごく値段の高い会席をここでやっても仕方ないので、こういうお店のあり方や、地元の野菜を使ったお膳という形に行き着きました。といっても、料理に使っている技術や手間暇は会席そのままなので、うちをきっかけに日本料理により興味を持っていただけるような場所にもなればなって思っています」。

食後のデザート。この日はグレープフルーツゼリー。お皿やお膳なども、納屋に残されていたものをかなり活用している。最高の引き継がれ方。

店にあふれる草花は、東京で花屋さんで働いていた経験もあるという、妻の早穂さんによるもの。淡河の花農家から仕入れてドライフラワーにしたミモザ、スターチスなど。

店の奥、中庭ガーデンとなっているところは、早穂さんのお母さんが手塩にかけた草花があふれんばかりに。こちらを楽しみに足を運ぶお客さんもいる。

もとは、2棟の納屋が並んで建っていた土地で、そのうち真ん中の納屋を解体して中庭に。2019年の開業時は土ばかりが目立っていたというのが信じられないほど。

ベイクドチーズケーキにふわふわミルクティー。こちらも早穂さんの担当。チーズケーキや自家製アイスなどのデザートメニューは、平日のキモリ膳のセットデザートとして注文することができる。なお、土日ならカフェ営業もあり。

「私は昔、夫と同じ店で働いていたときも接客をしていましたけど、どうしても仕事関係でいらっしゃる方が多かったので、ほぼお客さんは男性で。だから、ここでは女性に向けたお店づくりがしたいなっていう気持ちがありました。といって、田舎の女性はすごくいそがしいので、すっと食べてすっと帰れるくらいの気軽な店になればいいなと思ってます」と早穂さん。

実際、家族4世帯で来られるお客さんも。たしかに、店のすぐ前に車を停められるし、店内はバリアフリーだし、キッズランチに絵本類も準備されている。家族一同で近所でちょっといいご飯を、という利用にもぴったりだ。

ちなみに、BGMにはharuka nakamuraのピアノ音楽が空間に寄り添うように流れていた。

そうそう、浩治さんに神戸の食材のことも聞きました。

「ちぢみほうれん草や北神ねぎといった、東京では見たこともなかったこのあたりの野菜が面白くて、味も強いんです。普通のキャベツや白菜にしてもうま味が違うから、やっぱりこのあたりの土がいいんだと思う。だから、あまり調味料も使わずに野菜のうま味を生かすような料理が増えました。魚もすごくおいしいし、日本料理をやってる人にとってはとても楽しい土地だと思います」。

お昼はキモリ膳ともうひとつ、天丼も選べます。

 

 

キモリ
●北区淡河町萩原696
営業時間:11~14時L.O(土日は11~15時L.O、カフェ~16時L.O) 月・火曜&不定休
電話:070-8546-6112
https://www.instagram.com/kimori0530/
掲載内容は取材当時の情報です。メニューの価格は変更になる場合がございます。

 

<キモリまでの道のり>

文:竹内厚

写真:岩本順平