人生は野菜スープと音楽と
神崎奈津子さんが描く、見事な野菜のドローイング画。これを見ながらぜひ聴いていただきたい音楽を神戸在住の文筆家で、ラジオDJの仕事もされている安田謙一さんに選んでいただきました。ケールに合う1曲はこちら、フレディ「関西空港」です。
フレディーという歌手が歌う「関西空港」という曲を知ってから、もう10年以上経つ。
演歌とソウルの融合、ということで「エンソル」というジャンル名とともに、カタコトの日本語歌詞をエキゾチックなメロディに乗せた。いま聴いても、はじめて聴いたときのゾクッときた感覚をフレッシュに思い出す。
この曲をきっかけに、彼と親しくなった。出身はアメリカ、アラバマ州バーミンガム。米国海軍に入隊、80年代に来日。除隊後、神戸で音楽活動をはじめた。偶然にも誕生日が2日違いということもあり、成長期に聴いた音楽にも共通するものがあった。
「アラバマの名物の食べ物は何なの?」だったか「地元のソウルフードは?」だったか。どんな風に聞いたかは忘れたが、返事ははっきり覚えている。「ケール」と答えてくれた。
すかさず、「ケールって、あの、青汁の?」と反応した。これまでの人生でおそらく一度も食べたことがないし、どんな形状なのか知らない。たぶん、具体的にどうやって食べるのか、という話をしてくれたが、残念なことにまったく覚えてはいない。せっかく答えてもらって、話題がそこで途絶えるのも芸がないので、「日本で青汁が商品化されたときに、それを飲んだタレント(悪役商会の八名信夫)が一言、まずい、というテレビのコマーシャルがあったよ」という話はしたと思う。
にしても、「まずい」というキャッチコピーも強烈だけど、それ以前に「あおじる」というネーミングが凄いと改めて思う。
さて、アラバマでケールがどんな風に食べられているのだろう。インターネットで「Alabama + Kale」と検索すると、「KALE ME CRAZY」という名前のフード・カフェがヒットした。これまた強いネーミングだ。メニューにはサラダや春巻き、スムージーなどがあり、身体によさそうな見栄えをしている。
安田謙一:1962年生まれ。神戸在住。ロック漫筆家。著作に『神戸書いてどうなるのか』(ぴあ)など。ここ数年間に書いたライブ評をまとめた『ライブ漫筆』(誠光社)をコロナ禍に刊行した。
※神戸の野菜図鑑|ケール の記事はこちら