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気軽に立ち寄りたい、 国道沿いの“食品”ピットストップ!

志染川と平行に走る国道沿い、かつて地域の市場があった場所で営業をはじめた「The Sowers(ザ・ソワ―ズ)」。もと倉庫だった一角を改装して気持ちのいい店空間になっているが、看板もごくごく小さく、果たしてここが何屋さんなのかひと目ではわかりづらいかも。
先に答えを書いておけば、自家焙煎のコーヒー、地域の野菜、それを使った焼き菓子を販売する「食品販売所」だ。
店名は「種蒔く人」の意。普段の暮らしに、周囲の地域に、ここからいろんなキッカケが生まれたらという思いをこめたそう。
店主の安田新汰さんの焙煎するコーヒーはこの店の看板のひとつ。新汰さんは、元町の「コーヒーラボ フランク」、トアウエストの「ジ・アンカー」で経験を積んだうえ、鹿児島の頴娃(えい)町に住みこんでの農業研修を受けてもいる。
定番の夜ふかしブレンドは焼き菓子との相性も◎。他にシングルオリジンの豆を数種類揃える。
「神戸の『ファーマーズマーケット』にもコーヒー屋としてよく出店させてもらってたのですが、周りの農家さんに対してコーヒーはファーマーズマーケットのプレイヤーとして参加できてない感じがあって。生産者と消費者の距離がどこか遠くて、コーヒー豆自体がどのようにつくられて、どう消費者に届くのかといったことなどもうまく伝えきれなかった。だから、自分でも農業を体験した上で、海外の珈琲生産の現場を見て、買い付けることまでできたらなって」。
というものの、コロナ禍にぶち当たって、海外渡航はまだ果たせず、その間に知り合った妻の沙梨さんとこの店を開業するのが先になった。
安田沙梨さんはこの北区が地元。店の一角に設けられた工房で焼き菓子をつくって販売。ここの開業前から勤める元町の食品店「ネイバーフード」でも週1で働く。
「木の実と岩塩のタルト」はクルミ、松の実にゲランド塩、オーガニックシュガーと、なるべくオーガニック素材を使用。1ピース450円。
奥に見えるのは定番のバスクチーズケーキ500円。
この日販売していた農産物は、西区のナチュラリズムファームの間引き菜、三木のウタリファームのトマト、淡路島の平岡農園のレモン…など。
「おいしい野菜を作ってられる農家さんが周りに多いので、それを私たちで一人占めするのではなくいろんな形で紹介していけたら」と沙梨さん。季節の野菜やフルーツを使ったタルトをはじめ、これからの季節はリンゴの焼き菓子なども試作予定。そう、なんといってもまだ開店から1年経ってない。
沙梨さんの母から開店祝いで贈られたアセビの木。店のシンボルツリーのように育つ。
母の影響を受けた沙梨さんもお花好き。たくさんの花や植物が店を彩ってさわやか。こちらのミモザは三田の園芸ショップ「トラハス」から。なお、「The Sowers」のコーヒー豆、焼き菓子は「トラハス」でも販売中。
店の奥に切られた窓からも緑があふれる。
店のBGMはビートルズ(のレコード)一択。これは新汰さんの父からの影響。
なかば屋外ともいえる店で冬は修業のような環境だったそうだが、あえてビニールシートなども付けずに営業。
コーヒー、焼き菓子はイートイン/テイクアウトいずれもOK。これからの季節はイートインも気持ちがいいはず。
それでもカフェやコーヒースタンドを名乗らずに、店名は「The Sowers」のみ。あくまでも「食品販売所」のスタンスで、また夫婦2人での営業ゆえカフェのようには手が回らないという理由も。
かえってそれが国道沿いのピットストップのような気軽さを生んでいる。すぐ店の前に駐車できるのもいい。
店の並びには名店「ゆさか精肉店」も。
「近所に大型スーパーもあるのに、ここで長年営業を続ける肉屋さんがあるのもこの場所を選んだ理由のひとつで。食に関心のある人がわざわざ立ち寄っていく場所になっていけば」と新汰さん。
なお新汰さんは、コーヒーの国際的な鑑定士資格「Qグレーダー」を取得済み。海外のコーヒー産地を直に見て、買い付ける目標をあきらめてはいない。

 

The Sowers
●北区山田町原野字舟田2-1
営業時間:11~18時(土日祝10時~) 水曜&不定休
https://thesowers-kobe.com/

 

<The Sowersまでの道のり>

文:竹内厚

写真:岩本順平